2003年7月
東京商工会議所
「環境負荷の少ない企業経営のヒント」作成にあたって
東商・環境委員会は、『環境保全への取組みを企業自らの問題としてとらえ、可能なかぎり自らの努力で解決する「自律した環境保全型」企業をめざす』ことを基本方針として、活動をしています。
今般、この「環境負荷の少ない企業経営のヒント」は、中堅・中小企業が、廃棄物をはじめとする各種環境関連の法律・条例に対応するだけでなく、環境問題に前向きな行動を伴った企業経営をするための指針となるよう作成しました。
この資料を「環境対策はかかる費用以上のコストダウンが可能になるのでは?」「今の事業や製品の中で、環境への取組みをPRできる要素はないか?」等の視点で見ていただき、徐々にでも取組みが始まれば、企業経営にも環境問題の改善にも効果が表れ、現在の厳しい経済状況コにお
いても、環境保全と経済性の両立が可能となるのではないでしょうか。
なお、この資料は、必要なページだけを抜粋して、社内での環境教育の素材としても使えるよう、構成されています。
東京商工会議所会員をはじめとする幅広い方々が、必要に応じ、ご関心に合わせ、様々な形で、この「環境負荷の少ない企業経営のヒント」をご活用いただければ幸いです。
本章は、以下の環境問題の概要について紹介しています。
Ⅰ-1 地球環境問題
Ⅰ-2 ローカルな環境問題
① 廃棄物
② 大気汚染
③ 有害化学物質の管理
④ ヒートアイランド現象
⑤ 騒音、振動、悪臭
・地球温暖化
地球温暖化とは、二酸化炭素等の温室効果ガスの濃度が高まることで温室 効果が強まり気温が上昇する現象です。地球温暖化は、海水面の上昇に伴う陸地の減少や気候変動等を引き起こすとも言われており、今後100年で地球の平均気温が1.4~5.8度上昇するという予測もあります。
・オゾン層の破壊
オゾン層は、有害な紫外線の大部分を吸収し、地上の生物を守っていますが、フロンガス等の人工的な化学物質によって破壊が進行しています。その結果、皮膚がんの増加等の悪影響を生じる恐れがあります。
・酸性雨
酸性雨とは、化石燃料の燃焼に伴い排出される硫黄酸化物や窒素酸化物等が含まれる雨で、土壌のアルカリ度低下、植生の衰退、湖沼の酸性化による魚類の死滅等の影響が出ます。
・砂漠化
砂漠化とは、比較的乾燥している地域の土地が、気候変動や森林破壊等の人為的な要因によって土壌中の栄養分が失われ、植物の育たない不毛の地となる現象のことです。砂漠化は、全世界で毎年500~600万ヘクタール(九州と四国を合わせた面積に相当)進行しています。
・京都議定書
京都議定書とは、地球温暖化問題を解決するために、先進各国が温室効果ガス排出量の数値目標を設定したものです。現在、EUと105カ国が締結済みで、ロシアが批准すれば、その90日後に京都議定書は発効します。日本の場合、2008~2012年の5年間の平均で、1990年に対してマイナス6%の削減が目標となります。
一般廃棄物は、家庭から排出される生ゴミや粗大ゴミ、事務所から排出される紙
くず等です。一般廃棄物は市町村(行政)が収集・運搬し、処分することとされています。
一般廃棄物の平成11年度排出量は、4,415万tです。この量については、「高止まり」と見る専門家が多くなっています。国民一人当たりの年間排出量は約400kgです。これは軽トラック(積載重量350kg)1.2台分に相当する量です。
一方、産業廃棄物は製品の製造等に伴って工場から排出される廃棄物等で、平成11年度排出量は約4億t(一般廃棄物の約10倍)です。
産業廃棄物は、排出した事業者が責任をもって自ら処理を行うか、都道府県等の許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託して処理してもらうこととされています。委託処理の場合は、産業廃棄物の収集運搬業者、処理業者と契約を行い、産業廃棄物の運搬処理の過程をマニュフェストにより確認することが必要です。
マニュフェストとは、産業廃棄物管理票とも言い、廃棄物の排出から最終処分までのすべての段階を管理票を受け渡すことにより確実に収集、処理されているか確認する手法です。平成10年からは、すべての産業廃棄物にマニュフェストによる管理が義務づけられています。
工場からの排気ガスは、主として悪臭防止法と大気汚染防止法によって規制を受けます。事業者が行う悪臭防止対策としては、悪臭の原因となる物質を含まない原材料の選定や製造・加工・処理過程の改善、脱臭装置の使用等が考えられます。
大気汚染防止法は、大気汚染対策の基本法です。大気汚染物質の規制は、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)等のばい煙等について、濃度基準や施設の構造基準等を規制しています。
窒素酸化物(NOx)は、光化学スモッグや酸性雨等の原因物質となるほか、呼吸器系の炎症をまねく原因となるため、大気汚染防止法によって工場等に対する規制が行われれてきました。
車の排ガスに対しては、大気汚染防止法において、一酸化炭素、炭化水素、チッソ化合物、粒子状物質(PM)、黒鉛に対して、自動車一台ごとの排出ガスの許容限度が決められ、道路運送車両法によって規制されてきました。しかし、交通量の増加やディーゼル車が増えたことにより、自動車からの窒素酸化物(NOx)が増加し、その対策として1992年に「自動車NOx法(自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法)」が制定され、2001年には「自動車NOx・PM法」に改正されました。
また、東京都は、2001年に「環境確保条例(都民の健康と安全を確保する環境に関する条例)」を施行し、2003年10月からは粒子状物質(PM)排出基準に適合しないトラックやバスのディーゼル車の運行が禁止されます(千葉県、神奈川県、埼玉県も同様です)。この法により、ディーゼル車を所有する運輸業者等の事業者は、①低公害な車両への買い替え、もしくは②PM減少装置(DPF(粒子状物質減少装置))等の装着が求められることになりました。
なお、中小企業にとって車両の買い替えやDPF装置の購入は費用的に多額の負担になることから、行政による資金調達面での助成制度があります。
有害化学物質の問題は、日本の公害問題の歴史でもあります。
1940年から1950年代は、富山のイタイイタイ病(カドミウムが原因)や、四日市公害(硫黄酸化物が原因)、熊本水俣病(メチル水銀化合物が原因)が表面化してきました。
1960年代から1970年代には、新潟水俣病、東京・千葉等の光化学スモッグ(NOxが原因)等の問題が発生し、大気汚染防止法や水質汚濁防止法等が整備されました。
1980年代に入ると、環境ホルモン、ダイオキシン、PCB等が問題となりました。PCB等は、日常的に電気部品等に使われていたものが、近年になり有害であることがわかった典型例です。また、これらは、特定の地域の問題でなく日本全域を対象とした問題となってきました。こうした有害物質は、少量でも発ガン性物質を有していたり、遺伝子異常をおこしたりすることが懸念されています。
こういった様々な問題を背景に化学物質審査規制法が制定され、また最近では、環境汚染を未然に防ぐ法としてPRTR法が登場しました。この法律は、有害性の恐れのある化学物質の排出量及び廃棄物に含まれる移動量を登録して公表する法律で、行政と事業者がこれらのデータを共有し、化学物質のリスク管理を行うものです。2001年より事業者による排出量・移動量の把握が開始されました。MSDSと呼ばれる化学物質安全性データシートによって、事業者は他の事業者に化学物質を譲り渡す際に、その成分や性質及び取り扱いに関する情報を伝えます。
有害物質による土壌汚染に対しては、2003年2月に土壌汚染対策法が施行され、土地所有者等は土壌汚染状況調査費用や土壌汚染を起こした場合の除去費用の負担を求められるようになりました。
水質については水質汚濁防止法によって、地下水、生活排水、公共用水の環境基準が設定されており、2000年からはダイオキシン類の排水基準も設定されました。
また最近、特にヨーロッパ向けの製品輸出に関連して、有害化学物質が素材や製造プロセスで使用される燃料等に含まれていないことの確認を要求される動きが高まりつつあります。
ヒートアイランド現象とは、都市圏に等温線を引くと都心部の高温部が島のように浮き上がって見える現象のことです。島のような形から、ヒートアイランド(熱の島)現象と呼ばれるようになりました。
原因は、
①土壌部分がコンクリートやアスファルト等に覆われ少なくなってきていることから、従来あった水分の冷却効果が期待できない
②ビルのコンクリートや道路のアスファルトに昼間時に吸収された太陽熱が、夜間に 放出され地表部に熱がたまる
③車の排気ガス
④オフィスの冷房機器等利用による人工排熱
といわれています。
東京都では、平均気温が100年前に比べ2.9度上昇し、熱帯夜も1961年の14日から2000年には41日に増え、熱中症や集中豪雨等を引き起こすと指摘されています。
夏場には、オフィス街等では気温が高いと冷房を強くするため排熱がさらに高まり、ヒートアイランド現象が増幅するといった悪循環を繰り返しています。
緩和対策としては、①オフィスビル等の建物屋上の緑化、道路(分離帯及び歩道)の緑化、②水を通す保水性舗装の採用、③低公害車等による排ガス削減、④省エネによる冷房機器等の排熱削減等が有効です。
典型7公害(騒音、悪臭、大気汚染、水質汚濁、振動、土壌汚染、地盤沈下)の苦情件数は、依然として高い水準にあります。
騒音に関する苦情の件数は、ここ10年くらいは減少傾向にあります。平成12年度は14,066件でした。発生源としては、4割近くを占める工場・事業場騒音に係わる苦情件数が減少しているのに対して、建設作業に係わる苦情が増加しています。
また、最近では、拡声機やカラオケ等による騒音も問題になっています。振動に関する苦情の件数は、ここ10年くらいは2千件台で推移しております。平成12年度は2,264件でした。その中では、建設作業の振動に対する苦情が最も多く、工場・事業所の振動に係わるものがそれに次いでいます。騒音に対しては騒音防止法が、振動に対しては振動防止法が適用されます。緩和策としては、防音壁、吸音材等による防音、低騒音・低振動型建設機械の導入が有効です。
建築物の設計段階から地域環境を考慮し、例えば物の搬出入に伴う作業・車両の騒音・振動対策(防音壁等)、騒音・振動発生施設に対する緩衝帯の設置、また同施設を敷地の中心部に設置する等の設計が有効です。
悪臭については、飼料・肥料工場・化学工場による苦情が減少しているのに対して、近年ではサービス業の悪臭による苦情が増加しているのが特徴です。
社会における環境問題の多様化、それに伴う環境意識の高揚、企業経営における多様な利害関係者との対応の必要性と社会的責任の増加が、企業の環境経営を後押ししています。また、環境への配慮を行うことは、当初はコストがかかったとしても、長期的にはコストダウンやリスクの軽減につながり、企業経営の改善に寄与します。
社会動向を考慮する企業は、環境にも配慮した行動をとります。例えば法規制への対応はもちろん、環境管理のシステム化、情報公開、社会システムの利用等を検討します。そうした企業が、社会動向に敏感な企業、顧客の動向に敏感な企業、顧客志向が根付いている企業と言えるのではないでしょうか。
この資料では、企業の環境経営を進めるためのツールとして、環境マネジメントシステム、環境報告書・環境会計、グリーン購入、環境教育を中心に紹介しています。これらを有効に活用することにより、環境に配慮した企業経営を推し進めることが可能です。
本章は、以下の環境マネジメントの概要について紹介します。
Ⅲ-1 環境マネジメントシステムによるチェック
①PDCAサイクル
②環境マネジメントシステム導入のメリット
③ISO14001の概要とポイント
④エコアクション21、地域の独自プログラム
Ⅲ-2 環境報告書・環境会計の作成
①事業環境の変化
②構成と内容
③環境会計
Ⅲ-3 グリーン購入の推進
①意義
②基本原則
Ⅲ-4 環境教育の実施
①意義
②環境教育の例
ここでは、環境マネジメントシステムの中心的な考え方であるPDCAサイクル(Plan:計画 Do:実施 Check:確認 Action:見直し)を説明します。このサイクルによって、継続的に環境問題の改善が図れます。
環境方針
・具体的にどんな環境改善に取組むかを経営層が決め、公表する
Plan:計画
・何が環境に著しい影響を及ぼすのか特定する
・組織が守るべき法律、約束事を特定する
・方針を達成し、著しい環境影響を改善すべく、目的・目標を定める
・目的・目標を達成する具体的な手段を策定する
Do:実施
・システムを適切に運用するために体制をつくる
・教育・訓練を行う
・組織内外とのコミュニケーションの方法を確立する
・システム文書を作成する
・文書管理の方法を作成する
・著しい環境影響を持つ作業や活動を特定し、適切な管理を行う
・緊急事態を明確にし、予防・緩和の手順を策定する
Check:確認
・計画した取決めが適切に実施されているか監視し、記録する
・不適合を是正し、予防する
・運用、監視、見直しの状況を記録する
・規格、計画に合致し、適切に実施されているか監査する
Action:見直し
・経営層が、システム全体を見直す
環境マネジメントシステムの導入には様々なメリットがあります。
①経営基盤の強化
PDCAサイクルの確立により、企業に目標管理の仕組みを導入します。このサイクルは企業活動の中で様々な分野に広げることができ、 企業体質の強化につながります。
②コストダウン
環境改善を行うことにより、コストの削減につなげることができます。コスト削減の有効な分野として、(1)原料、補助材料、経営資材の購入、(2)水の消費と排水、(3)エネルギ-消費、(4)残留物質と廃棄物処理、(5)輸送と交通、(6)包装材、をあ げることができます。
また、環境対策には前段処理が重要であり、早期の対策は長期的な環境対策 費用を低減させます。
③取引関係の改善・強化
近年では、環境マネジメントシステムの導入を取引条件とするところが増えてきています。これにより、取引先から生じる環境リスクを低下させることができます。
④信用力の向上
環境に配慮した経営は、企業の社会性を示すことになります。社会的責任を果 たすことは、企業としての体質、経営者の先見性、企業体力を示すことになり、企業への評価を高めます。
⑤環境汚染リスクの回避
環境汚染は、ひとたび起こすと企業イメージを大きくダウンさせます。また、汚染の修復に莫大な金額がかかり、 企業の屋台骨を揺るがすこともありますが、 環境上の緊急事態を予防し、緩和するシステムを備えることにより、環境汚染リスクを大きく低下させることができます。
⑥企業活動のベクトルあわせ
環境マネジメントシステムの導入により、環境に配慮した行動が企業行動原理の一つとして確立されます。企業を支えるものとして様々な価値感や企業文化がありますが、 環境配慮もその柱の一つとなるものであり、 社員の意識あわせを図ることができます。
国際標準化機構は1947年に設立され、現在130カ国以上の参加があります。世界共通の規格・基準を10,000以上設定してきましたが、 ISO14001は環境マネジメントシステムに関する国際規格であり、1996年に発効しました。
ISO14001には以下の特徴があります。
①システム規格である
公害規制とは異なり、数値的な管理値(例:○PPM以下等)を定めたものではありま せん。環境マネジメントシステムが有効に機能するための諸条件を定めた規格です。
②自主的取組みができる
自主的に導入するかどうかを決め、方針を定め、目的・目標の水準も自分でできる 範囲で決めます。
③あらゆる組織で導入が可能である
あらゆる地域、規模、業種において独立した管理機能があれば導入が可能な規格 です。日本国内でも製造業だけでなく、行政、工業試験所、病院等様々な業種で広 がりつつあります。
④継続的改善ができる
システム規格であるため、継続的改善の対象は環境マネジメントシステム自体となっています。マネジメントサイクルにより環境を改善する目的に沿い、システムを改善することができます。
国内ではすでに10,000以上の事業者がISO14001を取得しています。日本は、世界の中で最もISO14001を取得した事業者が多い国となっています。近年では、公共調達や大手企業を中心に、取引の中で優遇される条件にもなりつつあります。
また、ヨーロッパには、EMAS(環境管理監査制度)という制度もあります。
なお、ISO14001の認証取得には、数百万円の費用(コンサルティング、審査等)がかかります。東京都やいくつかの区では助成制度を設けていますが、一層の拡充が求められています。
環境省では、中小企業等の事業者に対し、「自主的に環境に関わり、気づき、目標を持ち、行動する」ことができる簡易な方法を提供する目的で、環境活動評価プログラム(エコアクション21)を策定し、その普及を進めています。
近年の環境経営の普及、グリーン調達、環境報告書の普及、廃棄物・化学物質に対する法規の整備、ISO14001取得の広がり等の新たな動きに、地方公共団体でもエコアクション21をベースにした独自のプログラムの創設が増えてきています。例えば、京都・環境マネジメントシステム・スタンダード「KES」、仙台版環境ISO「みちのくエコステージ」等です。
こうした動きを踏まえ環境省では、平成15年度中に以下の方向性に基づきエコアクション21を改定し、平成16年度より普及を強化することが計画されています。
①環境経営システム(環境マネジメントシステム)を組み込むこと
②把握すべき環境負荷の項目及び取組むべき内容を定めること
③作成・公表すべき環境報告の項目を定めていくこと
④環境行動計画を策定し公表する事業者に対して、審査、認証、登録の仕組みを構築すること
⑤地域における簡易型の環境経営システムとの連携、住み分けを考慮すること
なお、この計画では、中小企業が積極的に取組めるように、費用の上限が20~30万円程度となる予定です。さらに、これらの国内の認証制度が、ISO14001同様、取引の中で優遇される条件として普及することが求められています。
環境報告書の必要性は、以下の視点から益々高まっています。
①環境コミュニケーションのツール(社会的な信用を得るための広告ツール)
②社会的な公表、説明責任
③環境保全活動推進のツール
環境報告書は、企業の環境情報公開のために作成されています。不透明な事業活動により、消費者や市民からの信頼を失い、経営基盤が危うくなっている企業がある中、事業者にとっては、様々な利害関係者と透明性の高い関係を築くことが必要になっています。
企業にとって環境への負荷を少なくすることは社会的責任です。環境問題に関心を持つ利害関係者が増えており、消費者の動向に敏感な企業、消費者志向の高い企業ほど、環境問題に関心が高く、環境報告書の作成に熱心となっています。
様々な企業評価基準の中に「環境」の項目を入れるケースが増えています。優良企業としての評価を得るためには環境への配慮が欠かせません。環境報告書を出すことは、優良企業として評価してもらうための情報提供手段でもあります。
さらに、社外の環境報告書を読んだ方からの意見、感想、提案を吸収し、その後の活動に反映させることによって、環境問題への対応のレベルアップが図れます。
また社内では、社員の理解や認識を高め、環境問題への対応を全員参加型にしていくことにも活用できます。
環境報告書は、以下の環境省・環境報告書ガイドラインに沿って作られるケースが多いようです。
①基本的項目
・経営責任者緒言、報告に当たっての基本要件、事業概要等
②環境保全に関する方針、目標及び実績等
・環境保全に関する環境方針、考え方
・環境保全に関する目標、計画及び実績の報告
・環境会計情報の総括
③環境マネジメントシステムに関する状況
・環境マネジメントシステムの状況
・環境保全のための技術、製品・サービスの環境適合設計等の研究開発状況
・環境情報開示、環境コミュニケーションの状況
・環境に関する規制遵守の状況
・環境に関する社会貢献活動の状況
④環境負荷の低減に向けた取組み状況
・環境負荷の全体像
・物質、エネルギー等のインプットに係わる環境負荷の状況及びその低減対策
・事業エリア上流(製品、サービス等の購入)や下流(製品・サービス等の提供)での環境負荷の状況及びその低減対策
・不要物等アウトプットに係わる環境負荷の状況及びその低減対策
・輸送に係わる環境負荷の状況及びその低減対策
・ストック汚染、土地利用、その他の環境リスクに係わる環境負荷の状況及びその低減対策
一方、以下の簡易な項目で数枚の環境報告書を作成する例もあります。
事例:三協物産㈱ (A4サイズ6ページ)
1)代表者あいさつ
2)この一年の主な取組みと今後の課題
①廃棄物の管理削減、リサイクル、社員教育
②環境汚染物質の管理削減
③利害関係者により行われる環境活動への支援
環境会計とは、環境保全にかかる様々なコストが、財務、環境両面でどう寄与してるか把握するための仕組みです。内部的には企業の経営管理のツール、外部的には環境報告書に記載し、対外的なコミュニケーションを図るツールとなります。
環境会計には、以下の目的があります。
・費用対効果の把握
・設備投資の意思決定材料
・コスト削減の指標
・従業員の意識向上
・外部への情報提供
<環境会計の項目>
①環境保全コスト(金額)
・事業エリア内コスト:大気・水質・土壌汚染防止、エネルギーの効率化、廃棄物リサイクル等
・上流コスト、下流コスト:グリーン購入、生産販売した製品等のリサイクル等
・管理活動コスト:社員の環境教育、環境マネジメントシステムの運用・構築等
・研究開発コスト:環境保全に資する製品開発、企画設計等
・社会活動コスト:自然保護、緑化、景観、地域住民への基金作り、セミナー等
・環境損傷コスト:土壌汚染、自然破壊の修復等
②環境保全効果(数量)
・事業エリア内効果:汚染物質削減量、温室効果ガス削減量、廃棄物削減量等
・上・下流効果:グリーン調達購入量、有害性のある化学物質の使用量等
・その他効果:緑化実績値、河川等の清掃実績等
③環境保全に伴う経済効果(金額)
・経済効果:リサイクル事業の収益、エネルギー費用削減、省資源による費用削減
・リスク回避
グリーン購入は、商品を購入する際に、価格、品質、利便性といった購入条件のほかに、いかに環境に配慮された商品かを判断基準に含める購買活動のことです。
結果的にグリーン購入を通じて、企業の環境経営や環境配慮型の商品開発が促進されることになります。
グリーン購入を促進するために、平成13年4月「グリーン購入法」が全面施行されました。
①国の機関はグリーン購入を義務付けられました。各省庁は「調達方針」を毎年作成・公表し、実績を環境大臣に報告・公表します。
②地方自治体は努力義務を負っています。毎年調達方針を作成し、調達するように努めます。
③企業・国民もできる限りグリーン購入に努めます。
④国はグリーン商品等に関する情報を整理・提供します。
また、1996年、環境庁(当時)の呼びかけで、グリーン購入の促進と情報提供を目的に、グリーン購入ネットワーク(GPN)が設立されました。主な活動は、購入ガイドライン策定、商品の環境データブック作成、普及啓発、表彰制度等です。
グリーン購入は、下記の基本原則を考慮して実施します。
<グリーン購入の基本原則>
①必要性の考慮:購入する前に必要性を充分考える
購入は必要か/現在の所有品の修理やリフォームはできないか/共同利用・所有・レンタルはできないか
②事業者の取組みの考慮:環境負荷の低減に努める事業者から製品やサービスを優先して購入する
環境マネジメントシステムを導入している企業の製品か/環境への取組みは評価できるか/環境情報を公開しているか
③製品、サービスのライフサイクルの考慮:製品ライフサイクルにおける多様な環境負荷を考慮して購入する
環境汚染物質は削減されているか/省資源・省エネルギーに配慮しているか/持続可能な資源利用をしているか/長期使用は可能か/リサイクルは可能か/再生素材を利用しているか/処理・処分は容易か
グリーン購入の対象商品は、高い買い物とのイメージがあります。しかし、現在は、価格が低下しているものも多く、ライフサイクルコストの比較(例:省エネ製品)を考慮すると、価格的にも充分に見あうものが増えています。
企業における環境教育は社会における環境問題の重大性を認識することから始まります。自ら行動にすることにより環境問題に対し社会的な変革を進めることが必要です。
そのためには、社員一人ひとりの意識をあわせ、全員参加で改善を行うことが重要です。
こうした意識をもつことは、社員に社会性を持たせることになります。環境教育は、モラル教育、倫理教育、コンプライアンス教育につながります。現在、社員のモラル低下に悩んでいる企業は環境教育を通じて、モラルアップを考えてみましょう。
企業経営は社員一人ひとりのモラル・倫理がベースです。全員参加型で実施される環境問題への取組みは、社員の意識の改革を促し、企業体質を強化することになります。
環境教育と一言で言っても、以下のような様々な方法があります。
①社内での環境教育
「自社の環境方針について」、「自社の属する業界における環境対策の動向に ついて」、「法規則の遵守について」、「環境会計について」、「緊急事態の対応 について」等をテーマにした勉強会を開催する。
時期としては、省エネ月間(2月)、環境月間(6月5日は環境の日)、地球温暖化防止月間(12月)等に合わせても良い。
また、環境問題に関わる社員のボランティア活動を支援する。
②地域社会に向けた環境教育(社会貢献活動)
地域の住民を対象に自社施設の見学会を開催し、環境対策の公開と地域とのコミュニケーションを図る。また、小中学生を対象に、学校教育を支援していく。
③施設・展示会等の見学
東京都の施設(中央防波堤埋立処分場、風力発電施設等)
各企業の施設(企業館や工場等の一般見学)
エコプロダクツ(毎年12月)やNEW環境展(毎年5月)等の視察・見学を行う。
④講演会
東京商工会議所や国・地方自治体、NPO・NGOが開催する講演会へ出席する。
これらの講演会の講師を自社に招いて講演会を開催する。
本章は、企業における環境対応について紹介しています。
Ⅳ-1 省エネルギー(電気)
Ⅳ-2 省エネルギー(車)
Ⅳ-3 ゴミの減量・分別・リサイクル
Ⅳ-4 地域との連携
省エネルギー活動には、次のような活動が有効です。
・照明機器、電気機器等の節約使用(昼休みの消灯、不必要な照明機器の消灯、昼間の窓際照明の消灯、トイレ、廊下、階段等での照明見直し等)
→上記の節約を徹底すれば、照明に使われる電気代を最大15%程度まで節約できます。
・OA機器の省エネ管理(待機電力は使わない、使用後には必ずスイッチを消す等)
→パソコンの待機電力は平均3.5Wなので一台につき年間約700円のコストダウンになります。
・冷暖房の温度設定をこまめに行いましょう。(省エネルギーセンターは夏季28℃、冬季20℃を推奨)
→エアコンの設定温度を、夏季2℃上げ、冬季は2℃下げるだけで、エアコンが消費する電力を約10%節約できます。
・省エネ型機器(インバータの蛍光灯、省エネタイプのエアコン等)への買い替え
→インバータ蛍光灯器具は同じ明るさで約20%の省エネになります。
<ESCO事業>
ESCO事業とは、工場やオフィスビルの省エネルギーに必要な「技術」、「設備」、「人材」、「資金」等を包括的に提供する事業です。
①省エネルギー方策の診断・コンサルティング
②計画の立案、契約(省エネ効果の保証)
③設計施工管理、システム保守・運転管理
④資金調達・ファイナンス
が含まれており、省エネルギー改善にかかった費用は、ESCO事業実施後の省エネルギーによる経費削減分でまかなわれます。
会社でできる省エネ活動のなかで、車の使用に関するものは下記のような活動があります。身近でできるものを優先して行うことが重要と言えます。
①乗用車の燃料使用量の削減
・乗用車の平均乗車人数は1.3人に過ぎません。同方面に向かう時には、別々に行くのではなく相乗りを励行しましょう。
・待機中のアイドリングを停止しましょう。
→乗用車で10分間のアイドリングは、 二酸化炭素換算で90g、大型車だと200gのCO2がでます。 都内の自動車が毎日10分間のアイドリングを止めると12万トンものCO2が削減できます。
・急発進、急加速のないおだやかな運転をこころがけましょう。
→10回の急発進、急加速でガソリン120ccのムダです。 このガソリンで約1km走
れます。さらには、
・バス・電車等公共交通機関を率先して利用しましょう。
・低公害車、低燃費車を優先的に利用しましょう。
②乗用車の購入と管理
・使用状況の把握と整備、運行日誌等による管理を行いましょう。
・本当に必要な社用車は何台か検討しましょう。
さらには、
・低公害車(ハイブリットカー、低排出ガス認定車等)、低燃費車、小型車に買い替えましょう。
なお、東京都では、電気自動車、天然ガス自動車、ハイブリッド車、LPガス自動車、排出基準に適合したトラック等を東京都指定低公害車として指定し、購入時の融資・補助事業を行っています。
《ゴミの減量化》
・両面コピー、裏面コピー、縮小コピーを徹底しましょう。
→標準的なコピー用紙は、1枚0.6円程度です。月に1万枚コピーする会社ですと、その半分で3千円コストダウンすることができます。
・会議資料の保存や社内の伝達・掲示の電子化、ペーパーレス化を検討しましょう。
・使い捨て製品(紙コップ等)の使用・購入の削減を実施しましょう。
《ゴミの資源化リサイクル》
・Reduce(ゴミの量を少なくする)、Reuse(何度も使う)、Recycle(再生して使う)を徹底しましょう。
・個人用ゴミ箱の廃止やリサイクルボックスの設置等で、ゴミを捨てる習慣をやめましょう。
・廃棄文書・図書類やコピー・プリンター等のトナーカートリッジはゴミとして処理せず、リサイクルや再販の専門会社に回収してもらいましょう。
《生産工程の見直しによる歩留の向上》
・生産工程や事務処理のフローを廃棄物削減の観点で、もう一度見直してみましょう。
・不良品の削減や廃棄物の削減と処理費用の削減のために、歩留まりの改善をはかりましょう。
《紙ゴミの分別によるコストダウンの例》
・東商エコリーグ:東京商工会議所が進める古紙リサイクル事業です。現在、12支部で実施し、2,200社が活用しています。東京都の事業系ごみで出した場合、28.5円/kgですが、東商エコリーグで出した場合は14~20円/kgで排出できます。
・オフィス町内会:事業所から排出される紙ごみを、共同で借りているトラックによりルート回収を行う環境NGOです。集積所まで各自が持ち込む回収方式に比べて、各事業所の回収コストが軽減されます。
企業の活動によって発生する騒音・悪臭・大気汚染・振動等は、近隣の住民にとっては、生活上の不安になる可能性があります。近隣住民からの苦情が発生しないように、適切な設備等による対策を行うとともに、その情報の公開に努めましょう。
さらには、苦情対応のような受け身の対応だけでなく、
・近隣住民を対象とした会社見学会や懇談会の開催
・近くの学校での環境教育の実施
・近隣で行われている環境ボランティア活動(清掃、緑化等)への参加
・NPO/NGO活動への協力や参加
・自社施設の緑化
・募金活動への協力
等を行い、またその結果を公表することによって、近隣から信頼され、地域と共生する企業を目指しましょう。
●企業概要
・同社は、もともと塗料の卸売を手掛ける大進塗料として設立されたが、業界の再編成等もあって、1989年に新たに事業を始めるため大進興産と改めた。まずは潤滑油の輸入販売を行ったが、自社製品が必要と感じていたこと、
クライアントからの環境配慮についての注文が厳しかったことにより、環境配慮型商品の開発を行った。
●環境方針
・環境配慮と同時に機能性、デザイン性を持つ商品を提供する
・「環境企業」として認知されているので、引き続きこだわりを持つ
●環境配慮の取組み内容、特徴
・<製品> コピー用紙1枚から150ページの雑誌まで立たせることができる「マーブルスタンド」は、再生ガラスカレットを原料としたビー玉と、使いきりカメラなどの廃材を成型したアクリルを使用しており、包装も、有毒ガスを発生しないポリプロピレンや、100%再生紙を使用している。また、最近は中のビー玉を地球儀のデザインとする等、環境問題を連想させる工夫も加えている。グッドデザイン賞受賞、東急ハンズ・伊東屋・LOFT等で販売される他、企業のノベルティグッズや記念品としても利用されている。
1998年の発売以来、110万個の出荷を達成した。
●環境配慮におけるポイント
・商談で他社製品との競争になり、他の条件で差がない場合は、環境への配慮が決め手(他社との差別化)となるが、リサイクル商品というだけ(例えば、あまりきれいでない商品等)では選択されない、と考えている。
●企業概要
・家電製品、機械器具、工業製品の輸出を行う商社として1974年に設立され、中東・アジア・アフリカを中心に29ヶ所に海外事業所がある。
1996年にスタートさせた国内事業部で手巻きラジオ等を販売している。
企業コンセプトは「Something Unique(独自の商品の生産と販売)」と「Fabless Company(工場を持たず、商品企画に徹して、その商品に見合った生産拠点を選択する)」
●環境配慮の取組み内容、特徴
・<製品> 製品類の輸出先である中近東等で電気・電池のない地域にラジオを普及させることを目指し、高性能小型手回し充電器を開発し、同充電器内蔵ラジオを製品化した。ベーシックタイプだけでなく、本体にリサイクル木粉を利用したタイプ、合板を利用した大型タイプ、携帯電話充電機能を付加したタイプ等を展開している。今後とも、省エネを念頭においた新規商品開発を続ける。
・<省エネ> 省エネと経費節減のため、社用車や自家用配送車両を持たない。
●環境配慮におけるポイント
・手まわしラジオは環境配慮(省エネ)だけでなく、特に非常時・災害時に使うことも念頭に開発されており、携帯電話充電機能のついた「充電たまご」は、テレビショッピングでも話題の商品となった。商品性+環境配慮がポイントではないか。
●企業概要
・グリーンプリンティングとグリーンパッケージングによって、お客様の短時間仕上げニーズへの対応と廃棄物削減・省エネを実現した印刷物加工を行っている。2000年11月にISO14001認証を取得、2002年には第5回環境レポート大賞奨励賞を受賞している。
●経営方針、環境方針
・環境との調和を図り、ユニークなアプローチによる環境負荷低減を考慮した事業活動を展開する。
・パッケージング及び印刷製造に伴う事業活動・製品の環境影響を正確に把握し、技術的または経済的に可能な範囲で環境目的・目標を設定・見直しの枠組みを整え、環境マネジメントシステムの継続的改善を推進する。
●環境配慮の取組み内容、特徴
・<製品> 資材調達・生産・配送・廃棄・リサイクルの各段階において環境負荷の低い製品設計を推進する。そのために環境影響を数値的に捉え、プラスマイナスのインパクトを正確に算出し、フィードバックを推進する。
・<環境報告書> 会社概要、環境配慮型製品、環境配慮設計、環境方針、環境マネジメントシステム推進体制、環境目的・目標・プログラム、インプット/アウトプット、環境会計、環境法規制、環境教育、について記載している。
・<環境教育> 全従業員向けに、印刷業のISO14001、環境会計の実践等をテーマに開催するとともに、各部への専門教育を行っている。
●環境配慮におけるポイント
・工程を省きロスを少なくする印刷フロー設計を行うことにより、廃棄物や有害物質使用の削減と、納期の短期化の両方を実現させた。
・社内では若手の台頭・人材の発掘、社員の業務以外での能力向上、現場のコスト意識の向上が、効果として表れた。また取引上では、既存顧客へ環境対応力をアピールするとともに、新規顧客との接点が創出された。
●企業概要
・漁業用の高比重漁網の製造を中心に、集魚灯を由来とする照明器具・照明補助器具の卸や、カーテンウエイト等の紐類の製造を行っている。
●経営方針、環境方針
・漁業者と水産資源確保のために効率的な漁業を可能にし、なおかつコストの安い漁業資材を提供する
・LCA評価に基づく環境負荷の低い材料・資材・製造方法の採用に努める
・水産資源確保のための環境保全に努める
●環境配慮の取組み内容、特徴
・<製品> 使用済みの電池から回収された鉛をリサイクル(溶解)し、漁業用の重い特殊な漁網や鉛の入った重いロープを製造しており、後者はカーテンの裾やゴミ捨て場のカラス対策ネットとして利用されている。他には反射版装着とインバータ内蔵による高効率蛍光灯、生分解性IDカードホルダー・首かけ紐等を卸・販売している。
・<グリーン購入> 自社取り扱い品である高効率蛍光灯で、照明を増設せず照度を上げた上で、工場の電力消費を40~50%削減した。
・<環境教育> エコプロダクツ展での小中学生向け環境教育や千葉県白井市にある工場の見学会において、海・河川や上流の山・森の環境維持と、鉛のリサイクルの容易さ等を理解してもらう活動を行っている。
●環境配慮におけるポイント
・鉛のリサイクル製品や省エネ機器を主力製品として取り扱うとともに、外部展示会や自社工場の見学会において、自社の製品である鉛やリサイクルに関するPRを行っている。
●企業概要
・ゴム成形材料の加工・販売、ゴム原材料の販売、防塵・防毒マスク用や弱電用精密ゴム部品の製造を行っている。2000年にISO14001認証を取得し、製造工程の見直しによる廃棄物削減や、環境汚染物質を含む配合剤の代替化に取組んでいる。
●経営方針、環境方針
・有事即応の生産体制の追求
・「ゴムを通じて地球環境問題に貢献する」:廃棄物の管理と削減、環境汚染物質の管理と削減、利害関係者が行う環境活動への支援
●環境配慮の取組み内容、特徴
・<製品> 製品の品質を損なうことなくPRTR法対応の代替品へ全面的に切り替えた。また、販売先からの環境汚染物質の問い合わせに答えている。
・<環境報告書> A4サイズ6ページで、代表者あいさつ、この1年の主な取組み(廃棄物の削減、ゴムのリサイクルのテスト、社内教育)、環境汚染物質の削減と代替品使用状況、外部の環境活動への支援をまとめている。
・<環境教育> 社内教育としては、ゴム系廃棄物の行き先である最終処分場を見学した。また、外部向けとしては、葛飾ゴム工業会で「かつしか環境緑化フェア」に出展し、環境配慮についてPR活動を続けている。
●環境配慮のポイント
・ISO14001の導入によって、工程廃棄物の削減・不良率の低減による歩留まりの向上や、社内の双方向コミュニケーション体制の確立ができた。
・環境保全活動に熱心なメーカーからはISO14001認証取得が評価され、市場全体が海外製品にシフトする中でも、受注量の確保に寄与した。
・PRTR法に関する情報公開や問合せ対応を、受注増のきっかけにしたい。
●企業概要
・塗料の流通・販売を中心に、アートサイン、色彩設計、壁画製作、装飾塗装、リフォームなど「色彩」に関する事業を展開している。
●経営方針、環境方針
・塗料・色彩の事業活動を通じて、塗料自体の機能を駆使しながら、ハードとソフトを組み合わせて、心地よい環境づくりを目指す。
・環境対応型塗料・塗装資材等の積極的提案・提供
●環境配慮の取組み内容、特徴
・<製品> ドイツ製の自然素材100%塗料をはじめ、低VOC、水性塗料等の製品を取扱うとともに、作業現場での廃棄物が削減できるリサイクル容器による販売とその回収を行っている。また、顧客向けのニュースでのPRも行っている。
・<省エネ> 所有車をハイブリッド車に替えた。
●環境配慮のポイント
・ISO14001の導入から3~4年が経過し、社員の環境に対する意識がまとまってきた。今後は環境報告書で諸データの公表を行う予定である。
・本年7月からの建築基準法改正によって、ホルムアルデヒドやVOCを含まない塗料の活用が、業界全体での取組みも進むと思われる。
・リサイクル塗料容器の活用によって、固定客の獲得ができた。
●企業概要
・オリジナル不織布製品(各種包装資材、ラッピング、菓子包材等)の開発、製造、販売
●経営方針、環境方針
・地球に優しい提案
・想像から創造へ
●環境配慮の取組み内容、特徴
・<製品> ペットボトルを100%再生利用した素材「ペットファブ」を使用した水切り袋が、通信販売のカタログハウス「エコひいき」に採用され、リピーターも獲得して販売を続けている。また、素材・染色・型のオリジナル注文も受注が可能である。
●環境配慮のポイント
・コストは高くなるが、ペットボトルの「100%」リサイクルにこだわりを持っている。
・とうもろこし等のでんぷんを原料にした生分解性不織布も取扱うとともに、さらに新規提案品の検討を行っている。
●企業概要
・建築物の改修・防水・塗装・構造補強工事、アスベスト処理工事、コンサルタント業務等を行っている。
●経営方針、環境方針
・壊さないことへの挑戦
・壊さないことで、人と環境を守る
●環境配慮の取組み内容、特徴
・<製品> ①廃棄物、②地球温暖化問題、③生活環境、④建物の長寿命化、の4つのテーマを持って、建物改修工事に取組んでいる。約200社ある取引先(ビジネスパートナー)にも環境およびISO14001の方針を伝えている。
・<環境教育> 2年前より会社説明会は環境セミナーを含めて開催し、環境ビジネス市場全体における自社の位置付けと事業内容を説明している。
●環境配慮のポイント
・工事現場で廃棄物削減のデータ取り等により、環境問題への取組みがトップダウンだけでなく、若手・現場からのボトムアップもある。
・営業時も、コスト競争だけでなく環境に対する企業姿勢もPRしている。
・7月からの建築基準法改正によって、業界全体も環境配慮型に変わると思われる。
Ⅵ 環境負荷の少ない企業経営の推進
1972年ローマ・クラブは人類の危機レポートとして「成長の限界」を発表し、世界的なベストセラーとなりました。20年後の1992年には同じ著者たちが「限界を超えて」を発表し、人類が直面している限界を乗り越えることができるという展望を示し、私たちがとるべき選択肢を論じました。私たちは地球環境がどのような状況であるのかを理解し、未来に対して負の遺産を残すことのないよう、また、持続的なュ展が可能な経済社会が構築されるよう取組まなければなりません。 1990年代以降に制定・改正されてきた環境関連法は、事業活動を行う上での取組みと対応が必要とされております。また、「ISO14001(環境マネジメントシステム規格)」、「環境会計」は、環境負荷を削減する取組みを継続的に実現する仕組みづくりの土台となるものです。さらには、社会全体の環境問題に対する認識の高まりに応え、企業から社会に対し環境保全への取組みを積極的に情報発信することが期待さ黷トおります。
さまざまな主体の中で公平性、透明性が要求される時代、地域から地球的規模に至るまでの幅広い環境問題に関し、環境負荷の少ない企業経営は今後ますます重要な要素となってくるでしょう。
(早稲田大学環境保全センター長 新井智)
「環境を保全するには自然との共生が必要である」とよく言われる。現代の人工構造物の多い都市環境にしか接していない多くの若い人たちにとっては、人間に快適な生活空間を与えるように自然に手を加えた環境を、共生する自然としてとらえていないだろうかと、私は疑問に思っています。本物の自然は人間に対して非常に苛酷です。自然と共生するには、かなり厳しい我慢が必要です。蛇、蛙、蚊等の多くの動物が生息する自然の中で蛍が飛びます。初夏、これから蛍の季節です。今一度、みんなで自然を考えましょう。
(長崎大学環境科学部教授 武政 剛弘)
Ⅶ おわりに
以下の視点で、自社の事業や業務フローを見直してみてください。
①従来より環境に優しければ良しとし、まずは行動してみよう
②省エネやリサイクルに配慮した商品・サービスを提供しよう
③今の自社製品で、環境にも優しい点を探して、それをPRしよう
④法規制を守るだけでなく、環境マネジメントシステムを1度試そう
⑤A4サイズ1枚でも、環境報告書をまとめてみよう
⑥ボールペン1本、消しゴム1個から、グリーン購入をしよう
⑦社員一人ひとりの環境マインドを向上させよう
⑧環境イベントや企業PR施設を見学に行こう
⑨Bestでなくとも、Betterで良いから、選択をしてみよう
⑩取組みの輪を広げ、近隣との環境パートナーシップを形成しよう
⑪企業経営と環境対策のバランスを保ち、信頼される企業であり続けよう
これらのチェックポイントのうち、できるところから何か一つでも、取組みを始めてみませんか。そしてそれを継続し、徐々に項目を増やしませんか。それが、環境の維持、環境問題の改善、そして環境保全と経済性の両立につながるのではないかと、私たちは考えています。
(参考)リンク集
資料作成にあたっては、以下の各所からの情報を参考にしました。
<環境マネジメントシステム>
東京商工会議所ISO14001取得支援講座
http://www.tokyo-cci.or.jp/chiiki/seisakunavi/panf1.htm
(財)日本適合性認定協会 http://www.jab.or.jp/
㈱イーエムエスジャパン http://www.emsjapan.co.jp/
<環境報告書>
㈱エコマネジメント研究所 http://www.ecomane-inst.co.jp/
<グリーン購入>
グリーン購入ネットワーク http://eco.goo.ne.jp/gpn/index.html
<環境教育>
㈱西友 http://www.seiyu.co.jp/
<国・地方自治体等>
環境省 http://www.env.go.jp/
資源エネルギー庁 http://www.enecho.meti.go.jp/
東京都環境局 http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/
(財)省エネルギーセンター http://www.eccj.or.jp/
<事例紹介企業>
大進興産㈱ http://www.takatoku.com/daishin/marble.html
㈱太知 http://www.anabas.co.jp/taichi/
清水印刷紙工㈱ http://www.shzpp.co.jp/corporate/profileFrameset.htm
㈱海光社 http://www.ccjc-net.or.jp/̃seashine/
三協物産㈱ http://www.sankyo-bussan.com/
http://www.kankyo-katsushika.jp/
㈱シモダ http://www.shimoda-net.jp/
㈱アサクラ http://www.asakura-inc.co.jp/
ヤシマ工業㈱ http://www.yashima-re.co.jp/